ウールコートは高価なものが多く、長く愛用したいと思う方が多いアイテムです。お手入れの仕方が適切だと、ウールコートはその美しい見た目と機能性を保つことができます。そこで今回は、ウールコートのお手入れ方法を春・夏・秋・冬の4つの季節に分けてご紹介します。
1. 春のお手入れ – シーズンオフに向けた片付けとケア
冬が終わる春には、ウールコートの汚れをしっかり落とし、次の冬まで安全に保管できるよう準備することが重要です。
- 汚れのチェックとクリーニング
着用シーズンが終わったコートには、目立たない汚れが付いていることが多いです。袖口や襟元、ポケットの周りなど、手で触れる部分に汚れが溜まりがちです。必要に応じて、専門のクリーニングに出して汚れをしっかりと落としておきましょう。シミが残ったままだと、生地が変色したり傷んだりすることがあるため、必ず確認してから保管します。 - 毛玉取りとブラッシング
ウールコートはホコリや毛玉がつきやすいので、毛玉取り器やウール用ブラシでケアをします。毛玉を取り除くことで見た目が整い、コートがきれいに見えます。ブラッシングでホコリを取り除くと、虫がつきにくくなり、次のシーズンも快適に着られます。 - 防虫対策
クリーニング後は、防虫剤をコートに添えて保管します。防虫剤はコートの外側に置き、直接触れないようにするのがポイントです。通気性のあるガーメントバッグに入れて湿気を防ぐと、カビ防止にもなります。
引用元:ナチュラルクリーン株式会社
かけはぎ修復事例
春、秋で活躍する1枚仕立てのコートも修復が可能です。損傷が大きい場合はポケットの中などから生地を取る場合もありますが、小さいキズであれば、見た目には影響のない生地と生地の間の縫い代から糸を抜き取って修復することが多いです。
2. 夏のお手入れ – 湿気と虫から守る保管方法
夏の間、ウールコートは着る機会がないため、収納場所での環境管理が重要になります。湿気や虫に注意して保管すると、コートが長持ちします。
- 保管場所の換気
湿気の多い日本の夏は、衣類にも悪影響を及ぼします。保管場所に湿気が溜まらないよう、月に一度程度、収納スペースの扉を開けて空気を入れ替えましょう。風通しの良い環境で保管することは、カビの防止に非常に効果的です。 - 防虫剤の交換
夏の間は防虫剤の効果が薄れることが多いので、必要に応じて新しいものに交換します。これで虫食いのリスクを減らせます。また、防虫剤の匂いがコートに付かないよう、できるだけ通気性の良いカバーで保管すると安心です。 - 型崩れ防止
コートは厚みがあるため、収納場所で押し込むとシルエットが崩れやすくなります。肩に厚みのあるしっかりしたハンガーを使い、コートが窮屈にならないように収納すると、次のシーズンもきれいな形で着用できます。 - 夏物の洋服と分けて保管する
外出時に着用していた洋服に虫が付いていると、ウールコートに移動しまう可能性があることから、ウールコートなどの冬物と、着用中の洋服は分けて保管するようにしましょう。スペースがない場合は、冬物には防虫カバーをかけて虫の侵入を防ぐのも効果的だと思います。
引用元:ムシューダ | エステー株式会社
3. 秋のお手入れ – シーズンインに向けた準備
秋になり、寒くなってくるとウールコートを着る機会が増えてきます。その前に、収納から取り出して着用準備をしっかりしておきましょう。
- シワや汚れのチェック
保管中にできたシワや軽い汚れをチェックします。シワが気になる場合は、衣類用のスチーマーでスチームを当てて軽く整えます。スチームはシワを伸ばすだけでなく、臭いも除去できるので、着用前のケアにぴったりです。 - ボタンとファスナーの確認
ボタンやファスナーが緩んでいたり、動きが悪くなっていたりしないかを確認します。着用中に取れてしまうのを防ぐため、ゆるんだボタンは縫い直し、ファスナーがスムーズに動かない場合は専用の潤滑剤を使うと良いでしょう。 - 防虫剤の再投入
シーズンが始まる前に防虫剤を再度投入しておきます。もしコートに防虫剤の匂いが付いている場合は、風通しの良い場所で陰干ししてから着用すると、匂いが和らぎます。
かけはぎ修復事例
こういった生地のご相談は非常に多いです。製品の縫い代等から適した糸を抜き取って同じように織り込んで修復します。今回は焦げ穴でしたが、周りの毛羽が引っかかりやすいことから裂けキズや、糸引きのご相談もよくお受けしています。
4. 冬のお手入れ – 着用中の簡単ケアで美しさを保つ
冬はウールコートを頻繁に着用する時期です。こまめなケアを行うことで、コートが長持ちし、美しい状態を保つことができます。
- 毎回のブラッシング
コートを着た後は軽くブラッシングを行い、表面のホコリや小さなゴミを払い落とします。毎回のケアで清潔感が保たれ、繊維が整えられるため、虫もつきにくくなります。 - 通気とシワ対策
ウールは通気性が良く、汗や湿気がこもりにくい素材ですが、着用後は風通しの良い場所で少し休ませて湿気を飛ばします。また、月に一度はスチームアイロンを使って、シワを伸ばしておくと清潔な見た目が保てます。 - 摩擦の軽減
ウールは摩擦に弱いため、肩に重いバッグをかけると生地が傷みやすくなります。可能であればバッグは手に持つか、コートを脱いでから肩にかけるようにしましょう。こうした配慮で生地の毛羽立ちや傷みを防ぎ、コートの質感を保つことができます。
袖ぐり周りは負荷がかかりやすいことから、このように縫い目付近の糸が入れたり目が広がってしまうことがあります。製品から抜き取った糸で、生地を寄せていきながら織り込むように修復しています。穴が開いている所の周りも薄くなっていたため見た目以上に大きく修復しています。
まとめ
ウールコートのお手入れは、季節ごとに少しずつポイントが異なりますが、基本は「清潔に保つこと」と「湿気や虫から守ること」です。ブラッシングや防虫対策、湿気対策などを季節に応じて行うことで、ウールコートを長く美しい状態で着用することができます。
日々のお手入れや季節ごとのチェックで、あなたのウールコートを長持ちさせ、この冬も快適に過ごしましょう。