ニットに穴やほつれを見つけると、飛び出した糸を引っ張ったり、切ったり、自分で縫い合わせたりしたくなるかもしれません。しかし、最初の応急処置によって編み目がほどけたり、かえって修復範囲が広がってしまうことがあります。
今回は、ニットのキズを見つけたときにやってしまいがちなことと、状態に応じてどのような修復ができるのかをご紹介いたします。
1 飛び出した糸を切らない
穴から出ている糸は、元の編み目につながっている場合があります。短く切ってしまうと、修復に使える糸がなくなったり、どのように編まれていたのか分かりにくくなったりします。飛び出した糸は切らず、引っ張らず、そのまま残してください。
糸出(糸引き)


飛び出している糸を、元の位置へ少しずつ戻しながら修復しています。若干の引け跡は残っていますが、そこまで目立たず仕上げることができました。
この飛び出した糸を切ってしまうと、その部分が穴になり、新たに糸を入れ直して修復する必要があります。修復料金や仕上がりにも影響が出るため、飛び出した糸は切らずにそのままの状態でご相談くださいませ。
2 ほつれた箇所を触らない
糸を引っ張ったり、手や針で目立たなくしようと触ったりすると、周囲の編み目まで次々とほどけてしまうことがあります。小さな糸引きやほつれでも、触っているうちに線状のキズや大きな穴へ広がることがあるため注意が必要です。無理に元へ戻そうとせず、そのままの状態でご相談ください。
大きいほつれ


切れている糸が1本だけでも、ニット製品の場合、その部分に負荷がかかることで、このようにどんどんほつれが広がってしまうことがあります。
「小さなほつれだから自分でも直せるかも」と思われるかもしれませんが、編み目の仕組みを理解せずに触ってしまうと、かえってキズを広げてしまうことがあります。
小さなほつれの段階でも、無理に触らず、まずは専門店へご相談くださいませ。
3 自分で縫い合わせない
穴の端同士を無理に引き寄せて縫うと、周囲の編み目が歪んだり、修復部分だけ硬くなったりします。また、後から縫い糸をほどく際に、元のニット糸を傷める場合があります。
首回りの大穴(縫い留め加工あり)


縫糸で留めてあるところをほどき、製品から抜き取った糸で再度加工をしています。糸の欠損が激しかったことから、同じ編みではなく、平織と呼ばれる碁盤の目のような織り方で修復しています。同じ糸で修復していることからそこまで違和感なく修復できました。
4 接着剤や補修シートを使わない
接着剤が繊維へ染み込むと、生地が硬くなり、糸を動かせなくなることがあります。アイロン接着シートも、熱や接着剤によってニットが縮んだり、風合いが変わったりする可能性があります。

また、糊がきれいに除去できない場合は、付着している部分も含めて広い範囲を修復する必要が出てくることがあります。
「穴が広がらないように」「少しでも目立たないように」と行った処置が、かえって修復を難しくしてしまうことがありますので、糊や接着剤を使った自己処置はなるべく控えていただくことをおすすめします。
5 そのまま着用しない
袖、脇、肘、裾などは、着用中に引っ張られやすい場所です。小さな穴でも、腕を通したり脱ぎ着したりすることで、一気に広がることがあります。キズを見つけたら、いったん着用を控えてください。
脇の穴


脇の部分は着用時に気づきにくく、気がついた時にはこのような大きな穴になってしまっていることが多々あります。脇のほつれは、穴が大きく見えても切れている糸の本数自体は少ないこともあり、比較的きれいに仕上がりやすい箇所です。
シーズンオフでしまう前などに一度全体を確認していただくと、小さなほつれの段階で対処できるためおすすめです。
首回りの大きいほつれ


最初は小さいほつれでもほつれた状態で着用を続けていくと、このように大きいほつれになってしまうことがあります。首回りはほつれが大きくても比較的綺麗に仕上がることが多いですが、範囲が大きい分金額は高額となってしまうため、キズが小さいうちに着用を控えてまずはご相談くださいませ。
6 その他 毛玉取りの際にも注意が必要です
ニットのお手入れで毛玉取りをする際にも注意が必要です。
毛玉だと思って処理しようとした部分が、実際には飛び出した糸や糸引きである場合があります。
その糸を毛玉取り機やハサミで切ってしまうと、そこを起点に穴が開いたり、ほつれが広がってしまうことがあります。
特に、糸がループ状に飛び出している場合や、周囲の編み目につながっているように見える場合は、無理に切らず、そのままの状態でご相談ください。
糸引き多数


ザラザラしたところで擦れると、このように複数箇所糸が引けてしまうことがあります。
こういった糸出を毛玉と勘違いして毛玉とりを使うと穴になってしまうため注意が必要です。
今回は糸が引けた後にすぐにご相談いただいたため、欠損箇所もなく比較的綺麗に仕上げることが出来ました。
毛玉取りによる小穴


毛玉取りで、誤って飛び出した糸を切ってしまった事例です。
毛玉を取る際は、毛玉に似た「糸出」に注意が必要です。毛玉だと思って除去してしまうと、つながっている糸まで切れてしまい、穴になることがあります。
飛び出した糸の周りに、糸が引けたような線が出ているものや、指で触っても簡単に取れないものは、毛玉ではない可能性があります。その場合は毛玉取りで無理に除去せず、専門店へご相談くださいませ。
まとめ
ニットの穴やほつれを見つけた直後は、
- 糸を切らない
- 引っ張らない(触らない)
- 自分で縫わない
- 接着剤を使わない
- 着用を続けない
- 毛玉取り機やハサミで無理に処理しない
ことが大切です。加工されていない状態の方が、小さな範囲で修復できる可能性があり、値段も抑えることができます。何か手を加える前に、紬かけつぎ店へご相談ください。



