
毎日着るスーツ、お気に入りのスーツに裂け目や破れを見つけたとき、多くの方が「もう着られないかも」と思ってしまいます。
「お尻が裂けてしまった」「ジャケットの袖に穴が開いた」「パンツやジャケットのポケット口が擦れて破けた」…これらのトラブルも、適切な方法で修理すればまた違和感なく着用できるようになります。、そんなときこそ知ってほしいのが「かけつぎ補修」という修理方法です。
今回は、スーツの破れやすい場所や原因とトラブルにならないための対策をご紹介します。更に当店での実際のスーツの修復事例とともに、裂けや破れに最適な“かけつぎ”という技術の魅力をご紹介します。
どうして裂けたり破れたりするの?スーツが裂ける原因と裂けやすい部位、その対策とは
スーツの生地に裂けや破れなどのキズが生じる原因には、次のようなものがあります:
■ 裂けやすい部位まとめ
部位 | 主な原因 | 備考・対策 |
---|---|---|
お尻周り・モモ | 座った時の圧力、サイズ不適合 机など何かにひっかかる | ゆとりのあるサイズ選び、裏地補強など |
股下 | 摩耗、歩行時のすれ | 当て布補強、早めの修理対応 |
肩・背中 | 腕を動かした時の突っ張り | ストレッチ性のある生地を選ぶ |
肘 | デスクワーク時の圧力・摩擦 | 着用頻度を抑える、部分的に負荷がかからないよう意識する |
肩・背中 袖・袖口・ポケット口 | リュック・バッグなどの負荷 財布・スマホなど出し入れによる摩耗。壁などにひっかける | バッグの位置・持ち方・頻度に注意 ポケットには物を入れすぎない |
パンツや裾 | 靴との摩擦、引っかかり | 裾上げで丈を調整、傷んだら早めに補修 |
■ 主な裂けの原因と対策
1. サイズが合っていない(小さすぎる・窮屈)
- 裂けやすい部位:背中、肩、脇の下、太もも、ヒップ
- 原因:サイズがタイトすぎると、腕を上げたり座ったりするだけで、生地や縫い目に負荷がかかります。
- 対策:
- 試着時に動作確認(腕を上げる・しゃがむなど)を行う。
- 少し余裕のあるサイズを選び、必要に応じて仕立て直す。
- パターンに余裕のある「コンフォートスーツ」や「アンコン仕立て」などを検討。
2. 摩耗や経年劣化
- 裂けやすい部位:股下(内もも)、肘、膝、袖口、ヒップ
- 原因:座る・歩くなど日常動作で常に動く部分は、生地がすれて劣化しやすいです。
- 対策:
- 同じスーツを連日着ず、複数をローテーションで使用。
- 早めに当て布や裏地補強、かけつぎでのケアを行う。
- 着用後はブラッシングやスチームでケアし、頻繁なクリーニングは避ける。
3. 外的な引っかかり・衝撃・摩耗
- 裂けやすい部位:肩、背中、袖、パンツ裾、ポケット周辺
- 原因:リュックやバックとの摩擦擦れ。ポケットに物を入れる負荷による裂け、擦れ。
椅子の角、バッグの金具、鋭利な物に引っかけてしまうなど。 - 対策:
- 重いリュックや鞄をもたないようにする。着用頻度を減らす。
- バッグの金具やストラップに気を付ける。凸凹した壁との擦れにも注意。
- ポケットにものを入れないようにする。
4. 無理な動作による裂け
- 裂けやすい部位:ヒップ、股下、背中、脇
- 原因:しゃがむ・足を大きく開く・重い荷物を持つなどでスーツが引っ張られます。
- 対策:
- スーツ着用時は無理な動作を避け、必要に応じて一度ジャケットを脱ぐ。
- ストレッチ素材を使用したスーツや、運動量を確保したカッティングのものを選ぶ。
5. 縫製不良・生地の質
- 裂けやすい部位:縫い目、ジャケットの背中心、脇線
- 原因:縫い方が甘い、もともと生地が薄い・弱いなど。
- 対策:
- 購入時に縫製の丁寧さ、生地の厚みや張りをチェック。
- 信頼できる仕立て店やブランドを選ぶ。
- 気になる箇所は事前に補強を依頼する。
【事例紹介】実際にあったスーツの裂け・破れの修理
当店では、さまざまなスーツの裂けや破れ、穴の修理をご依頼いただいています。
● 事例1:肩周辺が裂けて大穴が空いたジャケット(リネン素材)


袖山の部分は、引っ掛かることが多く、このように裂けてしまうことが良くあります。
● 事例2:ジャケットのポケット口付近が裂けたジャケット


※ポケット口は加工に手間がかかるため、一般的な箇所と比べると少し高めの設定です
スラックスのご相談が多いですが、ジャケットのポケット口もスラックス同様に修理が可能です。スラックスと比べると着用時に見られやすい箇所になるため、ミシン修理よりかけつぎでの修理をお勧めしております。ポケット口横は負荷がかかりやすく破れやすいため、物を入れたり、手を入れるのは極力控えていただくことをお勧めします。
● 事例3:スーツズボンのモモがL字に裂けた(夏物)


夏物は生地が薄いためかぎ裂きの修理依頼が非常に多いです。通常の穴と同様に修復可能ですが、こちらの生地は少し目立ちやすい生地でキズも大きかったため、四角に多少修復跡が残っています。
● 事例4:ズボンのポケット下お尻に大きな裂けキズ


ストライプが入った生地の場合、縦に裂けたキズより、横に裂けたキズのほうが仕上がりが目立つことが多いです。こちらの生地は光沢があること、また縦糸と横糸の糸の色が違うこともあり、修復跡に目立ちが出ています。
かけつぎ(かけはぎ)とは?―“織って直す”日本の伝統技術
スーツ生地の「裂けキズ」をきれいに直すための最適な方法は、裂けの状態・生地・用途に応じて選ぶ必要がありますが、特に仕上がりの美しさを重視する場合は「かけつぎ補修」が最も適しています。
「かけつぎ」とは、破れた部分を手作業のみでキズの箇所を元に近い状態へ再現する補修方法です。
他の方法(ミシンたたきや裏当て補修)とは違い、見た目にほとんどキズが残らないのが大きな特長です。特にビジネススーツなど、見た目の美しさが求められる衣類には最適な修理方法です。「少しのキズだけど気になって着られない」「でも捨てるには惜しい」…そんな時こそ、かけつぎという選択を。
ご相談はお気軽に。
スーツのキズや穴に気づいたら、まずは状態が悪化する前にご相談を。当店では、修理前の写真を送っていただくだけで、概算のお見積もりが可能です。
修理箇所のサイズ、場所、色や素材なども考慮しながら、最適な方法をご提案します。
まとめ|裂けた、破れたスーツも直せます
スーツの裂けやキズは、決して“終わり”ではありません。正しい技術で丁寧に補修すれば、また長く着ることができる一着に生まれ変わります。
「スーツが破れた」「キズが目立つ」「穴が開いてしまった」…そんなときは、どうかあきらめずにご相談ください。あなたの大切な一着を、見た目にも自然に、丁寧にお直しいたします。