スーツに穴や破れができて修理店へ相談すると、かけつぎ、ミシン刺し、当て布など、さまざまな修理方法を提案されることがあります。どの方法も破れた部分の補修はできますが、修復後の見た目や強度の違い、費用などが大きく異なることがあります。
ビジネススーツや礼服、オーダースーツなど、見た目を大切にしたい衣類では、最初にどの修理方法を選ぶかが特に重要です。
スーツの穴修理はどの方法を選べばよい?
修理方法を選ぶ際は、何を優先するかを考えることが大切です。
修復跡をできる限り抑えたい場合は、かけつぎが第一候補になります。
費用を抑えながら広い範囲を補強したい場合は、ミシン刺しが向いていることがあります。
表から見えにくい場所を簡易的に補強したい場合は、当て布が選ばれることがあります。
それぞれにメリットと注意点があるため、キズの大きさだけで判断せず、着用目的や修復する場所も含めて選びましょう。
かけつぎ・ミシン刺し・当て布の違い
◎かけつぎ
かけつぎは、地域によって「かけはぎ」とも呼ばれます。
衣類本体の裾や縫い代などから取った生地や糸を使い、元の生地の縦糸と横糸、柄、織り方に合わせながら修復します。穴を上から縫い潰すのではなく、生地の組織を再現するように加工することが特徴です。
スーツは表面が平らで、わずかな縫い目や凹凸でも目につきやすいため、修復跡を抑えたい場合には、かけつぎが最適な場合が多いです。
かけつぎのメリット
- 製品から取った布や糸で修復することから馴染みがよい
- スーツ本来の雰囲気を残しやすい
- 柄を併せての修復ができる
- ジャケットやスラックスの目につきやすい場所にも対応しやすい
かけつぎの注意点
かけつぎを行っても、跡が残ったり、元に近い状態にならないものもあります。次のような生地や状態は、特に修復跡が目立ちやすい傾向があります。
・光沢のある黒や濃紺
・細い糸で織られた薄い生地
・縦糸と横糸の色が異なる生地
・キズ周りに擦れや色褪せがある
また、すべて手作業で加工するため、ミシン刺しや裏当てよりも費用が高くなりやすいです。
チェック柄パンツ 破れ


裾内側からとった布を使い、柄を合わせて織り目に沿って四角に修復しています。
このような柄のある生地は、柄の位置を正確に合わせて修復することで、比較的きれいに仕上がることが多いです。
◎ミシン刺し
ミシン刺しは、キズの裏側に補強用の生地や芯を当て、表面から細かくミシンをかけて破れを固定する方法です。ミシンたたき、ミシン補修などと呼ばれることもあります。
ミシン刺しのメリット
・広い擦れや破れを補強しやすい
・かけつぎより費用を抑えやすい
・比較的短い期間で対応できる場合がある
・作業着やカジュアル衣類では修理跡をデザインとして見せられる
ミシン刺しの注意点
表面に細かなミシンの縫い目が残ります。
デニムや作業着では馴染みやすい場合がありますが、無地のスーツや光沢のある生地では、修理箇所が分かりやすくなることがあります。また、ミシンで何度も針を通すため、生地が弱ったり広範囲になることもあり、後からかけつぎへ変更する場合は注意が必要です。
ミシン糸をほどいた跡に細かな針穴が残ったり、生地が弱くなったりすると、元のキズよりも広い範囲を修復しなければならない場合があります。

一方で、後ろポケット口は新しいスラックスでも負荷がかかりやすく、破れてしまうことがあります。そのため、修理跡をできるだけ目立たせたくない場合や、購入して間もない品物の場合は、かけつぎで修理することも選択肢の一つです。
◎当て布
当て布は、破れた部分の表側や裏側に別の生地を当てて補強する方法です。手縫いやミシンで固定する方法のほか、アイロン接着芯や補修シートを使用する方法もあります。
当て布のメリット
・比較的短時間で補修できる
・費用を抑えやすい
・キズが広がるのを一時的に抑えられる場合がある

色褪せによる色の違いが出る場合があるほか、かけつぎと比べると生地にふくらみが出やすく、貼り付けた布の縁にも違和感が残るため、「布を貼った感じ」が分かる仕上がりとなります。
かけつぎ修理費用は何によって変わる?
スーツの穴修理は、穴の長さだけで料金が決まるわけではありません。主に次のような点を確認して料金を判断します。
- 穴や破れの大きさ、周辺の擦れ具合
- 生地の糸の太さや織り方
- ポケット口や縫い目付近など、加工する場所
- すでにミシンや接着剤で修理されているか
写真では数ミリの穴に見えても、周囲まで生地が薄くなっている場合は、広い範囲を修復する必要があります。そのため、正確な料金は実物を確認してから決まります。
修理する前にキズの横に定規を置いた写真を送ることで、概算料金を算出しています。
最初の修理方法が大切な理由
一度行った修理をほどき、別の方法で再加工できる場合もあります。しかし、ミシン糸や接着芯、接着剤を取り除く際に、生地を傷めることがあります。
その結果、最初の穴よりも修復範囲が大きくなり、料金が高くなったり、修復跡が目立ちやすくなったりすることがあります。
「まずは安い方法で修理し、気になったら後でかけつぎをしよう」と考える前に、そのスーツで見た目をどの程度重視するかを考えてみてください。
特に大切なスーツは、ミシンや接着剤で加工する前に、かけつぎ専門店へ相談することをおすすめします。
ポケット口破れ ミシン刺しからの再加工


縫糸をほどき、一回り大きくかけつぎにて修復しました。多少の織り目の歪みは出ていますが、元と比べると大幅に改善することができました。ミシン刺しをほどく場合は、どういった縫われ方をしているかによって金額、修復範囲が変わってきます。
当て布修理からの再加工


製品から取った布を剥がして再加工いたしました。また生地が貼ってあるところの周りも汚れと傷みがあったため、それらも含めて大きく修復しています。若干の色違いは出ていますが、比較的綺麗に仕上げることができました。
まとめ|費用だけでなく、希望する仕上がりから選びましょう
かけつぎ、ミシン刺し、裏当ては、それぞれ目的の異なる修理方法です。
かけつぎは、修復跡をできる限り抑えたいスーツに向いています。
ミシン刺しは、修理跡が残っても費用や補強を優先したい場合に適しています。
裏当ては、表から見えにくい場所の簡易的な補強として選ばれることがあります。
どの方法がよいかは、スーツの価値や着用目的、キズの場所によって変わります。
大切なスーツや、買い直すことが難しい一着は、最初にかけつぎ専門店へ相談し、仕上がりと料金を確認してから修理方法を決めることをおすすめします。
かけつぎのよくあるご質問
かけつぎをすれば、穴は完全に見えなくなりますか?
生地やキズの状態によっては比較的目立たず仕上がりますが、完全に修復跡が消えるとは限りません。色、光沢、織り方、色褪せなどによって目立ち方が変わります。
ミシンで修理した後でも、かけつぎはできますか?
再加工も可能ですが、以前の修理をほどく手間や生地の傷みにより、修復範囲が広がり、費用が高くなることがあります。そのため、最初の修理方法は慎重にご検討ください。
※再加工によって現在よりも跡が目立つと判断した場合は、修復をお受けできないこともございます。
安価な修理方法は選ばないほうがよいですか?
着用目的や修理する場所によっては、ミシン刺しや裏当てが適している場合もあります。費用だけでなく、見た目や今後の着用期間も含めて選ぶことが大切です。
共布がない場合でも、かけつぎできますか?
製品の裾や縫い代など、表から見えにくい場所から生地や糸を取る箇所を検討いたします。布がなくてもあきらめずにご相談くださいませ。



